原型・石膏型を作って鋳込んでクリーングして焼いて磨いてまた焼いて…。
小さいビスクドールの作り方は基本的に大きいものと一緒ですが、その中に大きいサイズと同じやり方では出来ない箇所がいくつかあります。どうやったら出来るか考え抜いて編み出した方法や、天啓の如く閃いた方法。それらは私にとって宝です。大袈裟に言うと、力強く生きるための自信の源であり、私の人生の足跡です。
以前はそれが宝であると分かっておらず嬉しがってペラペラしゃべっていましたが、トラブルがあったこともあり「アイデアは誰の物?」と考えるようになりました。本当はどんどん作り方を公開して小さい人形を作る人が増えて欲しい、と思っています。でも自分が考え出したことをつい喋ってしまった結果、他人に「私が最初」なんて言われると不愉快どころか激怒モノです。ケチと思うなら思えば良いさ、と作り方については口を閉ざすようになっていきました。
それでも小さい人形を作る人が増えて欲しいし様々な作品を見たい気持ちは変わりません。そうだ、お金をいただいて教えたら良いのだ。それは妙案だ、よしっ。と教室を始めようと思い立ちましたが、お恥ずかしながら私は人にを教えるのも教わるのも苦手。お金をいただいただけの事が出来るのだろうか、と逡巡し「人形教室生徒モニター」さんをお迎えすることにしました。生徒モニターさんのお陰様で多くの事を学び、その中でより分かりやすく簡単&楽に作れる方法を見つけることも出来ました。アイデアもどんどん増え、満足度の高い作品が作れるようになってきました。
なのに、私の体は衰えていく!
目!
それに耐え難い頭痛!(←100%作業中の姿勢の悪さと眼精疲労が原因)
自分ではそんなに老いぼれていないと思っていましたが、一昨年花粉症から体調を崩しひどい時は月の半分寝込むようなこともあり、集中力も途切れがちで、いつまで人形を作れるのか不安が頭をよぎるようになりました。本格的に教室を始め、生徒さんの手の中で灰色の粘土が徐々に形になっていくのが嬉しく、もっと多くの人に小さな人形を作って欲しい、と思う気持ちが強くなる一方で、バリバリと人形教室を運営するほどの気力体力はありません。
教室を始める前から、技術の伝達方法として漫然と人形の作り方の本を出せたら、と考えていました。5年以上前に「5年以内に本を出す」などとうそぶいたこともありましたが、内容や費用の事を考えるとどうも先に進まずここまで来ていました。
ところが先日、自分でも驚くような鋳込み方法を思いついて、これでどれ程鋳込みが楽になるかと感激のあまりに踊り狂って倒れそうになる出来事がありました。こうなるともう、それだけで本書けるわ、と舞い上がって驕り高ぶる今、調子に乗って重い腰も上がってしまいます。そうだ、今だ、本を書こう!
今年はたくさん人形を作るけど来年はゆっくりしようと考えていたので、来年じっくりとまとめようと思います。
たとえそれが薄い本になろうとも。